day172 Rent
Rent=家賃。
私の35年来の推し、PSBの1987年の曲。たぶん、私が好きな10曲のうちのひとつ。PSBらしい、皮肉と俯瞰(他人ごと)と哀愁とポップが入り混じった名曲。
(最もアレンジが際立っていた2006年のcubismツアーバージョン)
I love you, you pay my rent. (愛してる、あなたは私の家賃を払う)
と、天使のようなピュアな声で、切なく歌う。これはもう、人生の矛盾の神髄だ。生きていくことの業のようなものを凝縮している。
歌詞のモデルは、セレブ(エドワード・ケネディのような)が家賃を払うNYCのペントハウスに住む、彼の愛人の女性が歌っているものだけど、日本中にいる一般的な夫婦も同じような構造だ。つまり夫が家賃を払い、家族が住む。
私の浜松のマンションも、のぶが家賃を払っていた。これは契約者がのぶだったからで、私も生活費を出していたので、完全にのぶの収入に頼っていたわけではない。でも、やはり日本では夫が世帯主であることが多い。
2人で住む部屋は家賃を払っていたけど、私は生まれ育った実家の近くに自分の仕事場兼自宅を持っている。とはいえ、土地は両親の所有のものを借り、現在は相続している。建物は、自分がめちゃくちゃ働いて、30代で建てた。その時は、結婚は無理だから自分で一生住める家を建てないとならないと思っていた(独身女性は賃貸物件を借りられない場合が多いし、猫も飼えないので)。
結婚後は浜松の賃貸暮らしだったけど、のぶが定年を迎えて浜松にいる必要がなくなったら、いずれは家賃の要らないここに引っ越してくる予定だった。まさか一人で戻ってくるとは思わなかったけど。ただ、のぶは妻の建てた家に住みたくなかったかもしれない。言葉では言わなかったけど、定年後はお金がないだろうからそれでも仕方がない、という感じだった。
私も、大好きな浜松を離れたくなかった。浜松は世界一住みやすい場所ではないかと思っていたから。だからこのアトリエを売って、そのお金で買える物件を浜松に買ってもいいと思っていた。
全てが夢。叶わぬ夢になった。
私は自分でバリバリ稼ぐのが理想なので、他人に家賃を払ってもらう人生は嫌だと思っていたけど、のぶなら許せると思う。
I love you, you pay my rent.