day150 伝えたい
人は亡くなったら、魂は天国に行くとか、お釈迦さまの弟子になって修行するとか、守護神のようにいつもそばにいるとか…いろんなパターンの話を聞きく。これは古今東西、愛する者を失った人を救うための優しい作り話なのだと思う。私は、本当は何もかも消えてなくなるのが本当のところだと思う。
でもそうは思っても、心の反対側では、まだ向こうの世界で魂は生きていると思いたい気持ちもある。伝えたいことがたくさんある。今でなくても、私が死んだら再会したい。その希望は、誰でも欲しい。
病気で仕事に行けない、お金を稼げないことでずいぶん落ち込んでいたのぶ。私が内職のような製作をしてなんとか毎日の生活費を稼いで凌いでいたけど、私はその行動と裏腹に、口では恨みごとを言っていたと思う。
コロナが原因で私もメインの仕事をなくしてシフトチェンジしていた。いつまで続くかわからない閉塞感、のぶの病気もハッキリと原因がわからないまま、いっこうに出口が見えない。誰も助けてくれない(親ですらこの時、半年以上音信不通だった)。何も考えず一人で部屋にこもってすぐお金にできる作品製作を朝から夜中までやっていた。
ちゃんとのぶの手を取って、目を見て、言えばよかった。
のぶは私と出会ってから、10年で貯金を使っちゃったんだよね。最初の引っ越しで敷金や家賃。家具や家電は全部新しく揃えた。その後2年も経たずに猫を飼える物件に引っ越し。結婚式もやった。台湾も行った。東京、大阪京都、神戸、金沢…もっと近いところも含めれば、いろいろな場所に旅行に行ったよね。私もちょっとは出したけど、ほとんどがのぶが出してくれた。家賃も光熱費も携帯料金も。私のために、家族のために頑張って働いてくれた。私はのぶに甘えていた。
だから、今度は私の番だよ。のぶが働けないなら私が働く。私が生活費を出すよ。借金が嫌いなのぶは保険を解約していた。私もそのくらいするよ。独身時代に死ぬほど頑張って働いて貯めた貯金を出すから、心配しないで。悩まないで。安心して治療に専念して。新しく総合病院を紹介してもらって予約したんだよね。頑張ろうよ。だから、いなくならないで。死なないで。
そう伝えればよかったのに、私は逆の事を言ってしまった。自分のバカさにほとほと呆れる。どうしたら償える?
明日はのぶの5回目の月命日。浜松まで会いに行きます。