まごころのぶ

2021年1月10日に急逝した愛する「のぶ」の生きた足跡です

day405 愛と仕事

世の中には、仕事も家庭も手に入れてうまくいっている(ように見える)人が大勢いる。もちろんそう見えるだけで、当人にはそれぞれ悩みや上手くいかないことがあるとは思うけど、たいていの人がたくさんの顔を両立されられていると思う。

 

どうやら私は1つのことしかできないらしい。

 

そういえば、フランス語を習いだしたら英語がきれいさっぱりわからなくなった(同時に何言語も話せる人も多いのに)。そんな感じで私は1つしか与えられないような気がする。

 

のぶに出会うまではほぼ仕事一筋だった。私の仕事は、自分で選び、なりたい職業、やりたい仕事、大好きで夢中になれることなので、人生でこういうものに出会っただけでも幸せなのに、それを仕事にできる(=お金を稼ぐ、食っていける)のだからとてもラッキーな人間だと言えるかもしれない(のぶにそう言われたことがある)。

 

でものぶに出会うまでは私はほとんど人付き合いはしないし、かなり引きこもり人生だった。愛想も可愛げもない女だったので、結婚もできないと思っていた。

 

が、のぶに出会って”普通の既婚女性”になったとたん、仕事ができなくなった。教室講師の仕事はしていたけど、作品がほとんど作れなくなった。売れなくなった。

 

よく幸せな人は作品が作れなくなるというけど、私の作品はそんなに人生の悲壮感を背負ったようなたいそうなものではない。作れたって良いのだけど。

 

いま、作品はいつになく売れている。

 

のぶがいなくなってどやって生きていこうとさめざめ泣いていたけど、経済的には元に戻った感じで、現在、私ひとり(と猫たち)で生きていくにはさほど心配はない。去年末から作品を置いてもらっているお店は、売れるかどうかの心配をよそにほぼ完売し、補充催促の連絡をいただくくらい売れているらしい。自分で出しているオークションもこれまですべて売れている。とてもありがたい。幸いにも実家の母は元気でお金も世話もさほどかからない。

 

でも、のぶがいてくれたら。

 

一緒にどこか、たまには近くでもいいから出かけたい。会社の話を聞きたい。のぶは私の社会への扉だったのだ。

 

それは私にはぜいたくなことなのだろうか。