day306 わがまま

引っ越したいと言っても、言っているだけでは実現はしない。賃貸物件情報は見るけど、それで終わり。

現実的には金銭的にもちょっと難しい。

前に住んでいた元浜のマンションは、物件情報だけでなくアパマンの営業の人に相談して見つけたラッキーな物件だった。本来はペットokじゃなかったのだけど、営業マンが大家さんに掛け合ってくれてペットokになった。たまたま管理会社が替わったキャンペーンをやっていて、2万円近く安くなっていた(一時的でなくずっと)。大谷さんのご好意でウィンドエアコンをつけてくれた。もうこんな良い物件は見つからないと思う。

築年数は古いけど、3DKと広くてペット可で、とても便利な場所だった。駐車場も管理費も含めて格安で、のぶもいて、幸せだった。なぜあの幸せを大切に守れなかったんだろう。あのマンションを引き払う事を決めたのはのぶの死のその日だ。あんなに幸せな場所に、私は足をふみいれる事すらできなくなってしまった。

今更どこかに引っ越すのも虚しい。だいたい今ですらほとんどアトリエから出ることはないのだ。実家にもほとんど行かなくなって引きこもっている。

のぶはあの日、アトリエに来ると言って来なかった。私は来ないのぶを待っていた。おそらく今もまだ私はのぶを待っている。