まごころのぶ

2021年1月10日に急逝した愛する「のぶ」の生きた足跡です

day88 続・捨てる

遺品整理についての続き。

 

孤独死する人は確実に増えていくだろうから、おそらく遺品整理の業者もこれから増えていくと思う。

 

もちろん私は今回初めて利用したのだけど、普通は2、3社で見積もりを取るものなのかもしれないけど、のぶの突然の死と遺族が私一人でやることが多すぎて、身も心も余裕がなく、葬儀社に紹介してもらった遺品整理の業者「まごころサービス」にお願いした。

 

浜松ローカルの会社で、結果的にはとても迅速丁寧にやってもらった。死にまつわる仕事なので、担当者も余計なことはいっさい聴かずに、それでいて心はこもっていたと思う。頼る者がない私にとってはとても心強かった。

 

のぶと私が借りていたマンションは3DK、54平米ほどの部屋だ。7年住んでいたのでほどほどに家財道具があった。ものはいっぱいあったと思う。

 

私の仕事道具や貴重品類、一部の家電家財(普通車のバン1台に乗る程度)以外は全て捨てたのだけど、考えるだけで気が遠くなる。

 

どれが要るものでどれがいらないものかの判断さえつかなかった。もちろん普通の引っ越しならそんなこともないのだろうけど、のぶの死から2週間ほどでの退去だったから、何もかも自分でやるには無理だった。なにせこの部屋に入る事すら、現実を突きつけられるようで脚がすくむ思いだったし。

 

冷蔵庫の中すらそのままで良いとのことだったので、のぶのなくなった日の夕ご飯になるはずだった食材も何もかもそのまま入ったままだった。テーブルの上の新聞も、椅子にかかったのぶのジャンパーもそのままで。

 

業者が家に来たのは2度だけ。最初の見積もりと、実際の作業日。私は、2人の生活が捨てられて行くのを見たくなくて、立ち会いはしなかった。作業中は、市役所に行ったり、浜松でできることをして時間を潰した。戻ってきた時には部屋は見事にカラになっていて、私の生活は全てがゴミに変化した。

 

悲しいとか辛いとか、そういう単純な言葉では言い尽くせない、無常というか、人生の儚さというか…人間は何のために生きているのかというような究極の問いみたいなものを突きつけられた気がした。

 

のぶは確かに生きていた。そして亡くなった。でもほとんどの人はそのことを知らない。私が死ねば、記憶はもう空気以下にしかならない。でもそんなもんなんだろう、人生て。

 

代金は20万円ほど。安いのか高いのかわからない。でも、一瞬の儀式でしかない葬儀が100万円かかるとすれば、かなりガッツリ消去した20万円かな。人間は消えるのにもお金がかかる。

 

しかし私にこの仕事はできない。とても感謝している。